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2011年4月30日土曜日

エイズの島。

フェスティバルが終わった後、近くにある同じエイズ対策の同期ハナ隊員の任地を訪問した。


おそらくケニアに派遣されているエイズ対策隊員の中で、最もHIV感染率の高い地域であるビタ。

ビクトリア湖の湖畔にあるこのビタには、マタツとフェリーを乗り継いでいかねばならない。

想像していた10分の1くらいの大きさの、それでも立派なフェリーに乗って彼女の任地にお邪魔した。

漁業が盛んで、緑の豊富な美しい地域だった。

多くの漁師が立ち寄る港には、その身を休める宿と体を売る女がいる。

話に聞いていた通りのHIV感染が広がりやすい環境がそこにあった。


今回の目的は、そのビクトリア湖に浮かぶ島に行ってみること。

漁師のおっちゃんからボートを一艘貸し切って、約1,800名ほどの住民がいるその島に到着した。

島の長が迎えてくれる。

「皆さんのことを彼は歓迎しているんですよ」とにっこり笑顔で説明する漁師のおっちゃんの言葉とは反対に、島長と呼ばれるその男は終始ムスッとしかめっ面を通していた。

英語もスワヒリ語も通じないと思われる島長は、終始持っていた針金をぐるぐる折り曲げて遊んでいる。通訳らしき男が横にいたが、まったく意味を成していない。

この状況には結構な衝撃を受けたが、もっと衝撃を受けたのは、

「この島のHIV感染率は何%ですか?」と質問したときの、キンと張り詰めた空気だった。


「はて、何のことかしら。」
「この島にはHIV感染者などいないことになっていますから、何%なんてわかりません。」
「あなた、禁断の質問をしてしまいましたね。」

というような雰囲気。

HIV感染者が大勢いる前提で聞きたい質問が山ほどあったが到底無理な状況であった。

その後、その実態を知るべく島にひとつある診療所へ。

小さな島なのに、病人や妊婦が登るにはしんどいであろう険しい坂の続く頂上にその診療所は立っていた。

眺めはいいが、何でわざわざこんな場所に立てたのだろうか。

しかも出来て5年も経っていない綺麗な建物だった。

疑問点が多い。

この診療所のスタッフは全部で4名、そのトップは看護師の青年であった。

1日に平均4名ほどの来院患者、1ヶ月に平均3名ほどの子供が生まれている。

HIV感染の検査を受けに来る人の数は1日約10名程度。

そのうちの7~8名が陽性。

HIV治療薬は隣の島からたまにしか送られてこない。

これらの情報を聞き出した。

壁に貼ってあった人口統計データがふと目に止まる。

約1,800人の島民のうち、15歳以下の子供たちが約1000人を占める。

若者といわれる層から上の人口が大幅に減っている。



医療の行き届かない場所で、確実にエイズで人が死んでいるのだ。

エイズであることを隠したままで。



感染していると知ったところで、治療を受けることができない島。

知ったところでどうなるのか。



だったら、今が楽しめればいいじゃん。

だったら、今夜に満足できればいいじゃん。

子供が多けりゃ楽しいじゃん。

中途半端な支援なら、放って置いてくださいな。



そんな声が島から聞こえた気がした。
 
HIV/AIDSを語ることが自然になってしまっている私には、とても貴重な経験となった。


ビクトリア湖畔の風景


















湖の水は貴重な生活用水
町でよく見かけるスタイル
湖上で漁師さんに会う


本日の収穫はボチボチ



携帯の数=スタッフの数
職場の電源で携帯の充電をする。
ケニアではどの職場でも見られる光景
 


多くの子供達に見送られながら島を後にする

母子感染を考えると、HIV陽性の子供が多いだろうことは十分予測できる。

エイズの脅威にさらされない時代はとっくに来ているのだ。

この子達に正しい教育が行き届きますように。





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